センターによる解決1:斡旋
以下が現在私がしている斡旋交渉(私から業者に電話してやりあってる)の一部。
典型的なものだけ挙げたいと思います。
同じような事例でも交渉に入るかどうかは様々な要素で判断します。
・ 認知症の高齢者への工事の跡のない次々住宅リフォーム契約
・ 強要めいた訪問販売による高齢者の健康食品と健康器具の購入
・ デート商法による若者のアクセサリー購入
・ 電話勧誘による悪質な教材二次被害(全くの不当契約)
・ ネットでも話題になっている実体不明の数百万円のマルチ商法契約
(※追記:今だから明かします。ビズインターナショナルでした)
・ サクラらしきメールによる出会い系サイトへの100万円を超える支払(カード決済)
・ SOHO募集の求人広告による機材名目で十数万円の支払い
・ 大手業者の代理店による電話勧誘の説明不足による契約
…などなど、業者と電話で渡り合っています。(現在、私は20件ほど持っています)
※追記:2年後の2011年現在では訪問販売が激減。出会い系や怪しい情報商材などネットを介した取引や、DMと電話勧誘による投資詐欺的な苦情の斡旋が増えています。背景に多数の業者が関わっており、交渉も複雑化しています。
センターでは消費者による自主交渉が基本です。
しかし、数%〜1割弱に関しては総合的な観点からセンターが間に入り
「斡旋交渉」をする必要があります。
前回、斡旋交渉の架空の例を作り流れを書きましたが、
今日は一般的に説明したいと思います。
実際の斡旋の流れの例を、「架空の事例」をもとに書いてみます。
実際は、相談総数の1割以下しか斡旋にならないのですが、
業務の中ではかなりのパワーを割いています。
注意:
ここでは相談内容も交渉も簡略化して書いています。
相談内容がほんのわずかでも違えば全く異なる対応にもなります。
消費者からは同じ相談事例にみえても相談員からみたら違う場合がほとんどです
これは経験上から創作した古典な架空の相談事例です。
商品や数字、細かな契約の経緯はあえて省きました。(実際の交渉は本当にいろいろな要素が絡み結果も様々です)
消費者「訪問販売で高額な商品を無理やり買わされました。
頭金と信販からの引き落としで○万円既に払いました。
信販から残額の請求が来ます。どうにかならないでしょうか」
相談員「詳しく当時のことを話して下さい」
消費者「点検に来ました、とドアの向こうで言われて(説明)
何度も帰って欲しいと言ったのですが。そのあとも…(説明)
私の病気も治ると言われました」
相談員「もう○ヶ月たっていますね。
なぜクーリングオフをしなかったのですか」
消費者「あまりに強引でクーリングオフをするのも怖かったんです。
さっき本社に”返したい”と電話したのですが…」
相談員「契約書をみせてもらえませんか」
※消費者が本当のことを言っているか、競合業者の差し金ではないか、
その辺はベテラン相談員ならかなり「ピン」と来るそう。
私はまだ経験が浅いので戦々恐々。だからひたすら詳しく聞き取り、
怪しいと思えば先輩に相談します。
消費者から契約書のFAXが来る
パイオネットで全国のセンターでの斡旋交渉例を確認したところ、
同様の苦情相談が多数出てきた。
〜 相談内容、業者他相談例、消費者自身では交渉困難との判断から、
センターが斡旋交渉に入る方向ですすむ。〜
相談員「契約書を見ましたが法律上記載すべき○○が
ちゃんと記載されていませんね。
まだクーリングオフを主張していいと思われます。
消費者契約法上の取消し事由もあるようです。
が、前者だけでの交渉は難しく、後者の証拠がないのも確かです。
(センターの機能権限を説明。交渉不調の可能性も伝える)
交渉にセンターが入ることも可能ですがどうしますか」
消費者「お願いします」
相談員「交渉には、業者にあなたから
契約のいきさつを書いた手紙(通知)を送ります。
あとは私が電話であなたと業者の交渉の間に入ります
(以下説明)」
消費者「ちなみにあの…この会社について、他にも相談が来てますか」
相談員「すいません…。それは言えません。
ただこういった商品で同様の相談は結構あります(一般的な説明)」
翌日。
消費者から経緯文の下書きがFAXで届く
相談員「下書きを読みました。
ここからここは、もっと具体的に書いた方がいいですよ。
また交渉上ここの表現は…(説明を続ける)」
消費者「わかりました。また書き直してFAXで送ります」
〜 何度か書き直して通知文を清書する 〜
消費者「できあがった通知書を送りました」
相談員「業者からの回答を電話で聞き報告します。がんばりましょう」
数日後。
センターから販売業者に電話。
相談員「ご本人からの通知書への回答は頂きたいのですが」
事業者「これは納得するのは難しいです。
書面不備と言われても些細なことである上、
お客様の書かれた不退去、不実告知などの事実はありません。
クーリングオフ期間に何も言われていない。
今更返品を受けることは無理です」
相談員「契約書にこの漏れがあると非常に困ります(理由の説明)。
またここまで具体的にご本人が書いています。
(法令違反などについて説明。理解しない業者には法の趣旨から)
(同業者の他センターの同様の多数の相談例を考慮して)
こういった相談は今回が初めてですか?
営業を今後もなさるなら…(説明する)。
具体的にどういった所が販売員の話と異なるのか再度確認を」
センターから信販会社に電話
相談員「抗弁は受けて頂けましたか」
信 販「はい。請求はとめています。交渉の状況はいかがですか」
相談員「(説明)。(加盟店管理責任の観点から)対処をお願いしたいです」
信 販「わかりました。こちらからも販売業者に話をします」
数日後。
販売業者からセンターに電話が。
事業者「営業担当から再度詳しく聞き取りをしました(説明)。
やはりお客様の通知書と全く同じとは言い難い。
しかし契約書の記載に至らない点があったことは確かです。
8割に値引くので使って欲しい。」
相談員「ご本人に回答を伝えます。ただ…。
(とても応じられる額ではないと思われ、問題点を再度指摘して説明)。」
センターから消費者に電話
消費者「それだけの金額はとても払えません。
相手のお話は○○というところが全く違います。
詳しく説明できます(以下説明)。」
相談員「では業者に説明し、交渉を続けます。」
〜 その後、なんどか業者や消費者とやりとりをして交渉を続ける
(その後の交渉は省略)〜
ケースによって様々な策を練ります(後日のエントリーに)
真摯に対応する業者によって、消費者の勘違いがわかることもありますし
怒鳴り散らすばかりの業者に契約事の一から説明することも。
詐欺の色の濃い業者と他関係業者を巻き込んだ心理戦になることも。
センター顧問弁護士と策を練ることもあります。
交渉を始めて○週間後後。
事業者「わかった。既払い金の○割の返金ではどうだろうか」
相談員に電話
消費者「これだけで済むなら。それで和解します」
業者と消費者の間の和解書を確認して終了。
その後相談内容、交渉内容、処理結果を報告し、
国民生活センターのパイオネットで全国のセンターから閲覧できるようになる。
相談が集まった場合、場合によっては行政処分の資料にもなる。
注意:架空の事例です。
何度も言いますが、
わずかな内容の違いでセンターの処理も業者の対応も全く異なることも。
一見類似の相談でも同じ事例はないので。